■ 守りたかったもの
一人の青年がある村を訪れました。そこは花々に囲まれたとてもとても綺麗な場所でした。
しかし、今の彼の視界に映るその村にはかつての美しさなどどこにもありません。
あるのはただ、灰と化したかつて村を飾っていた花達、崩壊している建物、至る所に転がっている”人だったもの達”の姿だけでした。
唇を噛みしめ、強く拳を握りながら彼が向かったのはそこがまだ活気あふれた村だった頃に彼が暮らしていた場所でした。
少しの希望を胸に、少し奥に進んだところにある赤い屋根の建物を目指して焼け野原となった村を駆け抜けます。
けれど…彼が到着した先には元々そこには何も建っていなかったという程に綺麗に焼け落ちた建物しかありませんでした。
家の前で崩れ落ちた時、ふとあるものが視界に入ってきました。それは、焼け落ちた建物の隙間から覗く小さな子供の手と、それを握るようにしてある女性の手でした。
ぐったりとしたその手、そこに生気がないことを青年は直ぐに理解しました。
静かな村に彼の悲しみに満ちた声だけが響き渡ります。
どうしてあの時、直ぐに駆けつけなかったのだろうと悔やみながら。
-END-
強さを求めるあまり、見失ってしまっていた。
-若かりし日のアーサー-
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