■ 望んだ世界


あるところに、誰よりも欲深い王様がいました。

彼は、どこよりも強くて大きな国を手に入れたいと思っていました。

その為に、何十年も戦いを続けました。

そして、勝ち続け、国はどんどん大きくなりました。



そんなある日、口髭の生えた中年の兵士が、王へ問いました。

「王よ、いつまで戦を続けるのだ?」

「おぉ、お前か。この国が世界一になるまで、私は戦い続けるぞ」

その口髭の生えた兵士は、王の最も親しい友人で、彼が誰よりも信頼している相手でした。

「…しかし、これ以上続けることは――」

「心配するな。これ以上長引かせはしない」

王は優しく微笑んで、そう答えました。



また別の日、長い金髪の綺麗な女性が王へ問いました。

「あなた、まだ戦いは終わらないの?この子も外で遊べなくて可哀想よ」

女性の後ろからは五、六歳くらいの少年が顔を覗かせていました。
その綺麗な女性と小さな少年は王の最も愛する人たちで、この国の王女と王子でした。

「大丈夫、もうすぐ終わるさ。もう脅えながら生活しなくていいんだ」

二人に微笑んで、少年の頭を撫でました。




そして、ついに戦いの終わるときがやってきました。




すべての国に勝利した王は、世界一になることが出来ました。


「これが私の望んでいた世界か…」


何かを見つめながら、王は寂しそうに呟きました。



彼の目の前には、二つのお墓がありました。



一つは彼が最も信頼していた者のお墓、もう一つは彼が最も愛した者たちのお墓でした。



「どうして…」



王は二つのお墓の前で泣き崩れました。そして、初めて気付きました。



王の望んだ世界に、王の望んだものなど何もなかったということを。



-END-


欲望の果てに、
大切なものを置き去りにしてきたんだ。



( 望んだ世界 )



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